クマべえ先生の行政書士試験合格ゼミ

過去問講義 H17年民法のページ

◆重要度:高

問題24 制限行為能力制度に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。

 自然人ばかりでなく法人も、成年後見人になることができるが、株式会社等の営利法人は、成年後見人になることはできない。
 制限行為能力を理由に法律行為が取り消された場合に、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
 本人以外の者の請求によって保佐開始の審判をするためには、本人の同意が必要である。
 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者について、本人、配偶者、4親等内の親族は、補助開始の審判を請求することはできるが、後見人や保佐人は、これをすることはできない。
 補助人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、さらに補助人を選任することができる。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ

【問題24の解説】 難易度:標準

 制限行為能力に関する民法の条文の知識を問う問題です。やや細かい知識が問われていて、さらに個数問題の形式ですので、難しく感じられるかもしれませんが、制限行為能力の制度は、たくさんの方が、細かいところまでつっこんで学習されている分野ですので、是非得意分野にしておきたいところです。

 肢ア:民法843条4項に「〜(略)〜成年後見人となる者が法人であるときは、〜(略)〜」とあります。

 つまり、法人も成年後見人になることができることを前提とした条文であることが分かります。

 そして、民法には「株式会社等の営利法人は、成年後見人になることはできない。」と定めている条文はありません。
 ですので、株式会社等の営利法人も、成年後見人になることができます。

 よって、この肢は妥当ではありません。

 肢イ:民法121条に「取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。」とあります。

 よって、この肢は正しいです。

 肢ウ補助開始の審判の場合は、民法15条2項に「本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。」という定めがありますが、保佐開始の審判の場合には、そのような定めがありません

 ですので、本人以外の者の請求によって保佐開始の審判をする場合でも、本人の同意は必要ありません

 よって、この肢は妥当ではありません。

 肢エ:民法15条1項本文に「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。」とあります。

 よって、後見人や保佐人も、補助開始の審判の請求をすることができますので、この肢は妥当ではありません。

 肢オ:民法843条3項に「成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは成年後見人の請求により、又は職権で、更に成年後見人を選任することができる。」とあります。

 そして、この条文は補助人についても準用されています(民法876条の7第2項)ので、補助人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、さらに補助人を選任することができます

 よって、この肢は正しいです。

 以上より、正しいものは肢イ、オの2つですので、答えは2です。



◆重要度:高

問題25 不動産と登記に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし妥当なものはどれか。

 Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却した後、Bが甲土地をCに売却したが、いまだに登記がAにある場合に、Bは、甲土地に対する所有権を喪失しているので、Aに対して移転登記を請求することはできない。
 Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却した後、Aが重ねて甲土地を背信的悪意者Cに売却し、さらにCが甲土地を悪意者Dに売却した場合に、第一買主Bは、背信的悪意者Cからの転得者であるDに対して登記をしていなくても所有権の取得を対抗できる。
 Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却し、Bは、その後10年以上にわたり占有を継続して現在に至っているが、Bが占有を開始してから5年が経過したときにAが甲土地をCに売却した場合に、Bは、Cに対して登記をしなくては時効による所有権の取得を対抗することはできない。
 Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却したが、同売買契約が解除され、その後に、甲土地がBからCに売却された場合に、Aは、Cに対して、Cの善意悪意を問わず、登記をしなくては所有権の復帰を対抗することはできない。
 Aの所有する甲土地につきAがBに対して遺贈する旨の遺言をして死亡した後、Aの唯一の相続人Cの債権者DがCを代位してC名義の所有権取得登記を行い、甲土地を差し押さえた場合に、Bは、Dに対して登記をしていなくても遺贈による所有権の取得を対抗できる。

【問題25の解説】 難易度:やや難

 不動産物権変動についての判例の知識を問う問題です。知識があれば解ける問題ではあるのですが、判例の内容を理解するのが難しい分野であることと、やや細かい判例もありますので、難しく感じられたかと思います。

 肢1:裁判所(大判大5.4.1)は、「売買による所有権移転の登記請求権は、売買によって所有権が移転したという事実に伴って生じるのであり、売主においてこれをなす義務があるというべく、買主は、たとえ不動産を転売してその所有権を失ったとしても、まず自己の所有権取得の登記をすることによつてその取得を完全なものとし、その後、転得者に転売による所有権移転登記の義務を尽くすべきであるから、転売によって自己の登記請求権を失うものではない。」としています。

 つまり、この肢の事例でいうと、Bは、Cに土地を転売して所有権を失ったとしても、Aに対しての登記請求権を失わない、としているのです。

 よって、この肢は妥当ではありません。

 肢2:裁判所(最判平8.10.29)は、「所有者甲から乙が不動産を買い受け、その登記が未了の間に、甲から丙が当該不動産を二重に買い受け、更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に、丙が背信的悪意者に当たるとしても、丁は、乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができる。」としています。

 つまり、この肢の事例でいうと、登記を完了したDは、D自身が背信的悪意者でない限り、第一買主であるBに対抗できる、としているのです。

 逆にいうと、第一買主Bは、登記なくしてDに対抗することはできない、ということです。

 よって、この肢は妥当ではありません。

 肢3:裁判所(最判昭46.11.5)は、「不動産が二重に売買された場合において、買主甲がその引渡を受けたが、登記欠缺のため、その所有権の取得をもつて、のちに所有権取得登記を経由した買主乙に対抗することができないときは、甲の所有権の取得時効は、その占有を取得した時から起算すべきものである。」としています。

 この判例を、この肢の事例に当てはめて整理すると、下の図のようになります。

17年問題25肢3

 つまり、Bは、登記がないのでCには対抗できません(二重譲渡の場面ですので。)が、甲土地を占有しているので、その占有の時から取得時効の期間を経過すれば、時効取得することができ、その取得を登記なくしてCに対抗することができる、ということを示しているのです。

 そして、Bは、その占有を売買によって始めたのですから、その占有について善意・無過失であるといえます。
 ですので、占有開始後10年経過すれば、時効取得することができます。

 よって、以上より、Bは登記なくしてCに対抗できますので、この肢は妥当ではありません。

 肢4:裁判所(最判昭35.11.29)は、「不動産売買契約が解除され、その所有権が売主に復帰した場合、売主はその旨の登記を経由しなければ、契約解除に買主から不動産を取得した第三者に対し所有権の取得を対抗できない。」としています。

 つまり、この肢の事例でいうと、AB間の契約を解除したに現れたCに対して、Aは登記をしなければ対抗することはできない、ということです。

 よって、この肢は妥当です。

 肢5:裁判所(最判昭39.3.6)は、「甲からその所有不動産の遺贈を受けた乙がその旨の所有権移転登記をしない間に、甲の相続人の一人である丙に対する債権者丁が、丙に代位して同人のために前記不動産につき相続による持分取得の登記をなし、ついでこれに対し強制競売の申立をなし、該申立が登記簿に記入された場合においては、丁は、民法第一七七条にいう第三者に該当する。」としています。

 つまり、この肢の事例でいうと、BとDとは対抗関係に立つ、ということです。

 言い換えると、Bは、Dに対して、登記なくして所有権の取得を対抗することはできません。下の図を参考にして、事例を整理してみてください。

17年問題25肢5

 よって、この肢は妥当ではありません。

 以上より、答えは4です。



◆重要度:高

問題26 次のア〜オのうち、Aの所有するそれぞれの物について、Bが即時取得(民法192条)によりその所有権を取得できる可能性がある場合は、いくつあるか。

 Aがその所有する建物をCに賃貸していたところ、Cがその建物を自己の所有する建物としてBに売却した場合
 Aの所有する山林に生育する立木について、Bがその山林および立木を自己の所有するものであると誤信して、その立木を伐採した場合
 成年被後見人Aは、その所有するパソコンをBに売却したが、Bは、Aが成年被後見人である事実について善意・無過失であった場合
 Aの所有する自転車をCが借りた後に駅前駐輪場に停めていたところ、Bがその自転車を自己の自転車と誤信して、その自転車の使用を継続した場合
 Aの所有する宝石をCが盗み出し、CがこれをBに売却したが、Bは、その宝石が盗品である事実について善意・無過失であった場合

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ

【問題26の解説】 難易度:難

 この問題は、各選択肢に述べられている事項について、民法の即時取得の要件に当てはめて考え、即時取得の効果が発生するかどうかを考えさせるものです。
 言い換えると、この問題は、いわゆる法的三段論法を用いて考えさせるため、とても難しく感じられたと思います。

 肢ア:民法192条では、即時取得について「取引行為によって、平穏に、かつ、公然動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。」と定められています。

 つまり、即時取得が成立するための要件がいろいろ定められているのです。

 そして、その要件の1つに「動産」であることを定めています。
 ですので、不動産については、即時取得は成立しないのです。

 これを踏まえて肢アの文を読むと、「Aがその所有する建物を〜」とあるように、この肢の文は、建物という不動産について述べられています。

 よって、肢アの場合、Bが即時取得によりその所有権を取得できる可能性はありません。

 肢イ:山林に生育する立木は、動産、不動産、どちらでしょうか?

 これについて、民法86条1項に「土地及びその定着物は、不動産とする。」とあります。

 つまり、山林という土地に、生育して定着している立木は、不動産である、ということです。
 もう少し平たくいうと、山林に生育する立木は、山林の一部として考える、ということです。

 よって、肢アと同じ理由により、肢イの場合、Bが即時取得によりその所有権を取得できる可能性はありません。

 肢ウ:即時取得の要件の1つに、「取引行為(例えば売買など)」であること、というのがあります(民法192条。肢アの部分に掲載。)。

 そして、この取引行為は、それ自体として有効なものでなければならない、と考えられています。

 ですので、取引行為に何か法律上の問題点(詐欺、錯誤、無権代理、制限行為能力など)がある場合、有効な取引行為とはいえませんので、即時取得が成立しないのです。

 よって、肢ウの場合、Bが即時取得によりその所有権を取得できる可能性はありません。

 肢エ:肢ウでも述べたように、即時取得の要件の1つに、「取引行為」であること、というのがあります。

 しかし、Bの行為は「その自転車を自己の自転車と誤信して、その自転車の使用を継続した」のですから、この取引行為にあたりません

 よって、肢エの場合、Bが即時取得によりその所有権を取得できる可能性はありません。

 肢オ:まず、Cは宝石を盗んだのですから、その宝石について無権利者です。

 そしてBは、無権利者Cから善意・無過失で、売買により宝石を手に入れています。
 ちなみに、売買は取引行為です。

 そして、宝石は動産です。

 さらに、占有者Bは、民法186条により、平穏かつ公然と占有するものと推定されます。

 このようにBは、即時取得の要件をみたしていますので、この肢の文で述べられていること以外に何か特別な事情がない限り、Bはその宝石を即時取得することができます。

 よって、肢オの場合、Bが即時取得によりその所有権を取得できる可能性があります。

 以上より、Bが即時取得によりその所有権を取得できる可能性があるのは、肢オの1つですので、答えは1です。



◆重要度:高

問題27 債権者代位権に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らして妥当でないものの組合せはどれか。

 著名な陶芸家の真作とされた陶器がA→B→Cと順次売却されたが、後にこれが贋作と判明した場合において、無資力であるBがその意思表示に要素の錯誤があることを認めているときは、Bみずから当該意思表示の無効を主張する意思がなくても、Cは、Bに対する売買代金返還請求権を保全するために、Bの意思表示の錯誤による無効を主張して、BのAに対する売買代金返還請求権を代位行使することができる。
 債権者Aは、Bに対する金銭債権を保全するためにBのCに対する動産の引渡請求権を代位行使するにあたり、Cに対して、その動産をBに引渡すことを請求することはできるが、直接自己に引渡すことを請求することはできない。
 不動産がA→B→Cと順次売却された場合において、それらの所有権移転登記が未了の間に、Dが原因証書等を偽造して、同一不動産につきA→Dの所有権移転登記を経由してしまったときは、Cは、Bの債権者として、BがAに代位してDに行使することができる所有権移転登記の抹消請求権を代位行使することができる。
 AはBから同人の所有する建物を賃借する契約を締結したが、その建物の引渡しが行われていない状態のもとでそれをCが権原なく占有してしまった場合において、Aが、自己の賃借権を保全するためにBに代位して、Cに対して建物の明渡しを請求するときは、Aは、建物を直接自己へ引き渡すことを請求することができる。
 自動車事故の被害者Aは、加害者Bに対する損害賠償債権を保全するために、Bの資力がその債務を弁済するに十分であるか否かにかかわらず、Bが保険会社との間で締結していた自動車対人賠償責任保険契約に基づく保険金請求権を代位行使することができる。

1 ア・ウ
2 ア・エ
3 イ・エ
4 イ・オ
5 ウ・オ

【問題27の解説】 難易度:やや難

 債権者代位権に関する判例の知識を問う問題です。やや細かい判例が問われている肢がありますので、少し難しく感じられたかと思います。

 肢ア:まず、大前提として、BがAに対して「錯誤だから無効だ!」と主張すると、BはAに対して「支払った売買代金を返せ!」という売買代金返還請求権が発生します。
 もちろん、CがBに対して錯誤による無効を主張した場合も同じで、CはBに対して売買代金返還請求権を持ちます。
 そして、この肢は、Cは、自分の売買代金返還請求権を保全するために(Bが無資力なので。)、Bに代わってAに無効主張できるのか(Bは無効主張していませんので。)、ということが問われているのです。

 それを踏まえた上で、この肢を考えてみますと、裁判所(最判昭45.3.26)は、「第三者が表意者に対する債権を保全する必要がある場合において、表意者がその意思表示の要素に関し錯誤のあることを認めているときは、表意者みずからは該意思表示の無効を主張する意思がなくても、右第三者は、右意思表示の無効を主張して、その結果生ずる表意者の債権を代位行使することが許される。」と判示しました。

 つまり、この肢の事例でいうと、第三者Cは表意者Bに対する債権を保全する必要がある場合で、表意者Bが、Aに対する意思表示が錯誤であることを認めているとき、表意者B自らは錯誤による無効を主張するつもりはなくても、第三者Cは表意者Bの意思表示の無効を主張して、BのAに対する債権を代位行使することができる、ということを示しています。

 よって、この肢は妥当です。

 肢イ:裁判所(大判昭10.3.12)は、「債権者は、債務者に引き渡すべきことを請求することができるほか、直接債権者自身に引き渡すべきことをも請求することができる。」としています。

 つまり、この肢の事例でいうと、債権者AはCに対して、動産を債務者Bに引き渡すよう請求することもできるし、直接A自身に引き渡すよう請求することもできる、ということです。

 よって、この肢は「直接自己(筆者注:債権者Aのこと。)に引渡すことを請求することはできない」としていますので、妥当ではありません。

 肢ウ:裁判所(最判昭39.4.17)は、「債権者は、債務者に代位してその債務者に属する代位権を行使することができる。」としています。

 つまり、この肢の事例でいうと、Bの代位権を、Cが代位行使することができる、ということです。下の図を参考に、頭の中をを整理してみてください。

17年問題27肢ウ

 よって、この肢は妥当です。

 肢エ:裁判所(最判昭29.9.24)は、「建物の賃借人が、賃貸人たる建物所有者に代位して、建物の不法占拠者に対しその明渡を請求する場合には、直接自己に対して明渡をなすべきことを請求することができる。」と判示しました。

 つまり、この肢の事例でいうと、AはCに対して、建物を直接自己へ引き渡すことを請求することができる、ということです。

 よって、この肢は妥当です。

 肢オ:裁判所(最判昭49.11.29)は、「交通事故による損害賠償債権を有する者がその債権を保全するため、債務者の有する自動車対人賠償責任保険の保険金請求権を代位行使するには、債務者の資力が債権を弁済するについて十分でないことを要する。」と判示しました。

 つまり、この肢の事例でいうと、Bの保険会社に対する請求権を、Aが代位行使するためには、Bが無資力であることを必要とする、ということです。

 よって、この肢は「Bの資力がその債務を弁済するに十分であるか否かにかかわらず、〜(中略)〜保険金請求権を代位行使することができる。」としている点で、妥当ではありません。

 以上より、妥当でないものは肢イ、オですので、答えは4です。



◆重要度:中

問題28 贈与者Aと受贈者Bとの関係に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らして妥当でないものはどれか。

 未登記の建物を書面によらず贈与した場合において、AがBにその建物を引き渡したときは、Aはその贈与契約を取り消すことができない。
 既登記の建物を書面によらずに贈与した場合において、AがBにその建物を引き渡したときは、所有権移転登記が未了であっても、Aはその贈与契約を取り消すことができない。
 既登記の建物を書面によらずに贈与した場合において、AからBにその建物の引渡しが行われていないときであっても、所有権移転登記がなされていれば、Aはその贈与契約を取り消すことができない。
 負担付贈与においてBがその負担である義務の履行を怠るときは、Aは契約の解除をすることができる。
 Bに対する定期の給付を目的とする贈与であらかじめ期間の定めがあるものは、Aが死亡しても、その期間内は効力を失うことはない。

【問題28の解説】 難易度:やや難

 贈与に関する条文と判例の知識を問う問題です。贈与は、普段の学習で手薄になりやすいことと、問われている判例の知識が細かいこととで、難しく感じられたかと思います。

 肢1:民法550条に「書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。」とあります。

 つまり、書面によらない贈与は、原則撤回することができますが、履行の終わった部分については、撤回することができない、と定められているのです。

 ここで、「履行の終わった部分」の意味について裁判所(最判昭40.3.26)は、「不動産については、引渡しをした場合のほか登記をなした場合でも、履行が終わったものと解すべきである。」としています。

 つまり、不動産の場合、その不動産を引き渡すか、または登記を移転したときに、履行が終わったものと考える、ということです。

 したがって、この肢の文の場合、AはBに建物を引き渡していることが「履行の終わった部分」にあたりますので、Aはその贈与契約を取り消す(撤回と同意)ことはできません。

 よって、この肢は妥当です。

 肢2:肢1と同じように、不動産の場合、その不動産を引き渡すか、または登記を移転した場合に、履行が終わったものと考えます。

 したがって、この肢の文の場合、AはBに建物を引き渡していますので、たとえ所有権移転登記をしていなくても、Aはその贈与契約を取り消す(撤回と同意)ことはできません。

 よって、この肢は妥当です。

 肢3:肢1と同じように、不動産の場合、その不動産を引き渡すか、または登記を移転した場合に、履行が終わったものと考えます。

 したがって、この肢の文の場合、AはBに建物を引き渡していませんが、登記を移転していますので、Aはその贈与契約を取り消す(撤回と同意)ことはできません。

 よって、この肢は妥当です。

 肢4:民法553条に「負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。」とあります。

 ですので、この条文によって、債務不履行についての定めが、負担付贈与についても適用されることになります。

 ただ、この肢の文では、債務不履行についての要件を備えているかどうかが判断できません。

 問題文に、判断材料がない場合は、原則論で正誤を判断するのがセオリーですから、この肢の文の場合、債務不履行についての要件を備えているものとして判断します。

 よって、Bがその負担である義務の履行を怠るときは、Aは契約の解除をすることができますので、この肢は妥当です(まあ、少し、あいまいな肢ではありますが・・・)。

 肢5:民法552条に「定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。」とあります。

 この条文は、定期贈与について、契約当事者の「人」を重要視する趣旨で、「贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う」と定められていると考えられています。

 ですので、あらかじめ期間の定めを置いたとしても、原則契約当事者の死亡によって、その贈与契約の効力は失われます(もちろん、それに反する特約を結ぶことは可能です。)。

 よって、この肢は「Aが死亡しても、その期間内は効力を失うことはない」としている点で、妥当ではありません。

 以上より、答えは5です。



◆重要度:低

問題29 遺留分減殺請求権に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らして妥当でないものはどれか。

 遺留分減殺請求権は、権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き、債権者代位権の目的とすることができない。
 遺留分減殺請求権の行使は、受遺者または受贈者に対する意思表示によってすれば足り、必ずしも裁判上の請求による必要はなく、いったんその意思表示がなされた以上、法律上当然に減殺の効力を生じる。
 被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合において、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれる。
 相続人が被相続人から贈与された金銭をいわゆる特別受益として遺留分算定の基礎となる財産の価額に加える場合には、贈与の時の金額を相続開始のときの貨幣価値に換算した価額をもって評価するべきである。
 遺言者の財産全部についての包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合には、遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有すると解される。

【問題29の解説】 難易度:難

 いやあ、これは難問ですね。この解説をつくるのに、図書館にこもって資料を探しまくりましたf(^^;
 そうでもしないと答えが解らない、という、とてつもない難問ですので、解けなくても、解説が理解できなくても、あまり気にしない方が良いでしょう。
 どうしても気になる方は、判例を検索してみて、事件の背景などを調べられたら良いと思います。ただし、とてもややこしいですけど。相続についての広い知識も必要ですし・・・

 肢1:裁判所(最判平13.11.22)は、「遺留分減殺請求権は,遺留分権利者が,これを第三者に譲渡するなど,権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き債権者代位の目的とすることができない。」と判示しました。

 つまり、遺留分減殺請求権は、例外として何か特段の事情がある場合は債権者代位の目的とすることができますが、原則、債権者代位の目的とすることはできない、と考えられているのです。

 よって、この肢は妥当です。

 肢2:裁判所(最判昭41.7.14)は、「遺留分減殺請求権の行使は、受贈者または受遺者に対する意思表示によってなせば足り、必ずしも裁判上の請求による要はなく、また一たん、その意思表示がなされた以上、法律上当然に減殺の効力を生ずる。」と判示しました。

 つまり、遺留分減殺請求権の行使は、その意思表示をするだけでよく、裁判上でも裁判外でも行使でき、そしてその意思表示がなされると、法律上当然に減殺の効力が発生する、とされているのです。

 よって、この肢は妥当です。

 肢3:裁判所(最判平10.6.11)は、「被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合において、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれていると解すべきである。」と判示しました。

 つまり、遺留分減殺請求権を持っている相続人が、遺留分減殺請求の意思表示をしないで受遺者に遺産分割協議の申入れをしたときでも、原則、その遺産分割協議の申入れには、遺留分減殺の意思表示が含まれているものと考えるべきだ、としたのです。

 よって、この肢は妥当です。

 肢4:裁判所(最判昭51.3.18)は、「相続人が被相続人から贈与された金銭をいわゆる特別受益として遺留分算定の基礎となる財産の価額に加える場合には、贈与の時の金額を相続開始の時の貨幣価値に換算した価額をもつて評価すべきである。」と判示しました。

 つまり、遺留分の算定方法について、民法1029条1項では「遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。」と定めています。
 その「贈与した財産の価額」は、贈与した時の金額そのままで計算するのではなく、相続開始時の貨幣価値(いわゆる時価)に換算して計算するべきだ、としているのです。

 よって、この肢は妥当です。

 肢5:裁判所(最判平8.1.26)は、「遺言者の財産全部の包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しない。」と判示しました。

 つまり、遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に、遺留分権利者に帰属する権利は、遺留分権利者個人の権利なのであり、遺産分割の対象となる相続財産となるのではない、としたのです。

 よって、この肢は「〜遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有すると解される」としている点で、妥当ではありません。

 以上より、答えは5です。


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