クマべえ先生の行政書士試験合格ゼミ

過去問講義 H17年商法のページ

平成17年改正前の旧商法をベースにして解説していますが、改正後の会社法、新商法についても簡単に触れています。

平成17年改正前の商法の条文を引用する場合、条文にカタカナが使われていて非常に読みにくいので、筆者が、条文の意味を損ねないように注意しながら、口語に訳しています。

◆重要度:高

問題32 株式会社の設立に関する次の記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。

 定款に発起人として署名をしていない場合であっても、株式募集の文書において賛同者として氏名を掲げることを承諾した者は、発起人と同一の責任を負う。
 発起人が会社の成立を条件として成立後の会社のために一定の営業用の財産を譲り受ける契約をする場合には、譲渡の対象となる財産、その価格、譲渡人の氏名ならびにこれに対して付与する株式の種類および数を定款に記載または記録しなければならない。
 設立に際して作成される定款は、公証人の認証を受けなければ効力を有しないが、会社成立後に定款を変更する場合は、公証人の認証は不要である。
 募集設立の場合には、発起人以外の者が、設立に際して発行される株式の全部を引き受けることができる。
 設立に際して発行される株式については、その総数の引受ならびに発行価額の全額の払込および現物出資の目的となる財産の全部の給付が必要である。

1 ア・ウ
2 ア・エ
3 イ・エ
4 イ・オ
5 ウ・オ

【問題32の解説】 難易度:標準

 株式会社の設立についての知識を問う問題です。それほど細かいことは問われていませんので、しっかりと知識の確認をしておきましょう。

 肢ア:旧商法198条前段に「発起人でない者が、〜(中略)〜株式募集に関する文書に、自己の氏名と会社の設立を賛同する旨の記載をすることを承諾したときは、発起人と同一の責任を負う。」とあります。

 よって、定款に発起人として署名をしていない(つまり、発起人ではない)場合であっても、株式募集の文書において賛同者として氏名を掲げることを承諾した者は、発起人と同一の責任を負いますので、この肢は妥当です。

 なお、この肢は、会社法においても妥当です(会社法103条2項)。

 肢イ:いわゆる財産引受についての問題です。
 まず、条文を見ますと、旧商法168条に「次の事項はこれを定款に記載しない場合はその効力を有しない。
〜(中略)〜
六 会社の成立後に譲り受けることを約した財産とその価格および譲渡人の氏名
とあります。

 つまり、財産引受をする場合は、定款に、(1)その契約の対象となった財産のこと、(2)その財産の価格、(3)譲渡人の氏名、の3つを記載しなければなりません。

 言い換えると、この肢の文にある「これに対して付与する株式の種類および」を定款に記載する必要がないのです。

 よって、この肢は誤りです。

 なお、この肢は、会社法においても、上記と同じ理由により、誤りです(会社法28条2号)。

 肢ウ:旧商法167条に「定款は、公証人の認証を受けなければその効力を有しない。」とあります。

 そして、この条文は、設立に際して作成される定款について適用されますが、会社成立後に定款を変更する場合には適用されません
 ですので、会社成立後に定款を変更する場合には、公証人の認証は不要です。

 よって、この肢は妥当です。

 なお、この肢は、会社法においても妥当です(会社法30条1項)。

 肢エ:募集設立の場合でも、発起人は、最低でも1株は引き受けなければならないと考えられています(旧商法174条を参考)。

 ですので、発起人以外の者は、発起人が引き受けなかった株式について引き受けることができるのであり、設立に際して発行される株式の全部を引き受けることはできません。

 よって、この肢は誤りです。

 なお、この肢は、会社法においても、上記と同じ理由により、誤りです(会社法25条2項で明文化されています)。

 肢オ:いわゆる資本充実・維持の原則の表れで、設立に際して発行される株式については、その総数の引受ならびに発行価額の全額の払込および現物出資の目的となる財産の全部の給付が必要とされているのです。

 よって、この肢は妥当です。

 なお、会社法では、設立に際して発行される株式の総数について、定款記載事項から除かれています。

 言い換えると、設立に際して発行される株式について、その総数の引受ならびに発行価額の全額の払込および現物出資の目的となる財産の全部の給付不要としているのです。

 ですので、この肢は、会社においては誤りとなります。

 以上より、旧商法に基づき誤っているものは、肢イ、エですので、答えは3です。



◆重要度:高

問題33 株式会社の取締役に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 取締役会決議について特別の利害関係を有する取締役は、取締役会の決議に参加することはできない。
 取締役が自己または第三者のために会社の営業の部類に属する取引を行う場合には、取締役会において当該取引に関する重要な事実を開示して、その承認を受けなければならない。
 取締役が法令または定款に違反する行為をしようとしている場合であって、それが行われると会社に回復困難な損害が生ずるおそれがあるときには、6か月前から引き続き株式を有する株主は、会社のために取締役に対しその行為の差止めを請求することができる。
 取締役が法令または定款に違反する行為により会社に損害を与えた場合には、会社に対して損害の賠償をしなければならないが、総株主の同意があれば、会社はこの責任を免除することができる。
 株主総会の招集の決定など、法律により取締役会が決定すべきものとされている事項についても、定款の定めによって代表取締役に決定権限を委譲することができる。

【問題33の解説】 難易度:やや易

 株式会社の取締役についての知識を問う問題です。いずれも素直な肢ばかりですので、しっかりと知識を身につけておきたいところです。

 肢1:旧商法260の2第2項に「取締役会の決議につき、特別の利害関係を有する取締役は決議に参加することはできない。」とある通りですので、この肢は妥当です。

 なお、この肢は、会社法においても妥当です(会社法369条2項)。

 肢2:いわゆる取締役の利益相反取引についての問題です。
 旧商法264条1項に「取締役が自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をするには、取締役会において、その取引について重要な事実を開示して、その承認を受けなければならない。」とある通りですので、この肢は妥当です。

 なお、この肢は、会社法においても妥当です(会社法356条1項1号)。

 肢3:旧商法272に「取締役が法令または定款に違反する行為をすることにより会社に回復困難な損害が生ずるおそれがある場合には、6ヶ月前から引き続き株式を有する株主は、会社のために取締役に対しその行為を止めるよう請求することができる。」とあります。

 そして、この株主の差止め請求権は、6ヶ月前から引き続き株式を有しておれば足り、1株しか持っていない株主でも行使することができます。

 よって、この肢は妥当です。

 なお、この肢は、会社法においても妥当と考えることができます(会社法360条1項)が、「引き続き6ヶ月」という要件は、定款でこれを下回る期間を定めることができるようになっています。
 また、「回復困難な」という要件は、「著しい」という語に変更されています。

 そして、公開会社でない会社(同条2項)、監査役設置会社と委員会設置会社(同条3項)については、特則が定められています。

 会社法を学ぶ場合は、以上の点に注意しておきましょう。

 肢4:旧商法266条1項では、取締役が法令または定款に違反する行為により会社に損害を与えた場合には、会社に対して損害の賠償をしなければならないことについて、種々細かく定められています。

 しかし、同条5項に「取締役の責任は総株主の同意があるのでなければ、これを免除することができない。」と定められています。

 逆にいうと、総株主の同意があれば、この取締役の損害賠償責任を免除することができる、ということです。

 よって、この肢は妥当です。

 なお、この肢は、会社法においても妥当です(会社法423条1項、424条など)。

 肢5:法律で取締役会が決定すべきこととされている事項は、下位の機関である代表取締役に、定款で定めたとしても委譲することはできない、と考えられています(旧商法260条2項など)。

 よって、この肢は誤りです。

 なお、この肢は、会社法においても誤りです(会社法362条4項など)。

 以上より、答えは5です。



◆重要度:中

問題34 商法上の営業等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 商法上の問屋とは、自己の名をもって、他人のために、物品の販売または買入をなすことを業とする者である。
 場屋取引とは、客に一定の設備を利用させることを目的とする取引であり、営業としてこれを行うときは、商行為となる。
 商法上の仲立人とは、他人間の商行為について、代理または媒介をなすことを業とする者である。
 匿名組合契約とは、当事者の一方が相手方の営業のために出資を行い、その営業から生ずる利益を分配することを約する契約である。
 商法上の代理商とは、一定の商人のために平常その営業の部類に属する取引の代理または媒介を行う独立した商人である。

【問題34の解説】 難易度:標準

 商法の商行為に関する知識を問う問題です。問われている内容は、平易なものばかりなのですが、学習が手薄になりやすいところですので、注意しておきましょう。

 肢1:旧商法551条では、問屋について「問屋とは、自己の名をもって他人のため物品の販売または買入れをなすことを業とする者をいう。」と定められています。

 よって、この肢は妥当です。

 ちなみに、この問屋は「といや」と読みます。いわゆる卸売商である問屋(とんや)とは異なるものですので、注意しておきましょう。
 例えば、問屋(といや)の代表的な例は、証券会社です。卸売りと、全然違うでしょう?

 なお、この肢は、新商法においても妥当です(新商法551条)。

 肢2:場屋取引とは、客に一定の設備を利用させることを目的とする取引のことをいいます。例えばホテル、レストラン、ゲームセンターなどがこれに当たります。
 ですので、この肢の前半は妥当です。

 次に、旧商法502条7号で、この場屋取引は営業的商行為であることが定められています。
 ですので、この肢の後半も妥当です。

 よって、この肢は妥当です。

 なお、この肢は、新商法においても妥当です(新商法502条7号)。

 肢3:旧商法543条では、仲立人について「仲立人とは、他人間の商行為の媒介をなすことを業とする者をいう。」と定められています。

 ですので、「媒介をなす」ことが仲立人の仕事なのであって、「代理をなすことは含まれません

 よって、この肢は「代理または媒介をなすことを業とする」としている点で、誤りです。

 なお、この肢は、新商法においても誤りです(新商法543条)。

 肢4:旧商法535条では、匿名組合契約について「匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配すべきことを約することによってその効力を生ずる。」と定められています。

 よって、この肢は妥当です。

 なお、この肢は、新商法においても妥当です(新商法535条)。

 肢5:旧商法46条では、代理商について「代理商とは、一定の商人のために平常その営業の部類に属する取引の代理または媒介をなす者をいう。」と定められています。

 ですので、肢3の仲立人と異なり、代理商は媒介だけではなく、代理をすることも仕事のうちに含まれます。

 そして、代理商は、依頼をしてきた一定の商人から、独立して仕事をする商人です。

 よって、この肢は妥当です。

 なお、この肢は、新商法においても妥当です(新商法27条)。

 以上より、答えは3です。


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