クマべえ先生の行政書士試験合格ゼミ

過去問講義 H17年行政法のページ

◆重要度:高

問題8 次の文章は、国の行政機関の長が命令等を発する権限について規定している「国家行政組織法」の条文である。(ア)〜(オ)にあてはまる語として正しいものの組合せはどれか。

第12条 各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、または法律若しくは政令の特別の(ア)に基づいて、それぞれその機関の命令として(イ)を発することができる。
第14条 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、(ウ)を発することができる。
2 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達するため、所管の諸機関及び職員に対し、(エ)又は(オ)を発することができる。

   ア   イ   ウ   エ   オ
1 委任  規則  告示  訓令  通達
2 授権  政令  通達  告示  訓令
3 委任  訓令  布告  通達  規則
4 委任  省令  告示  訓令  通達
5 授権  省令  通達  訓令  告示

【問題8の解説】 難易度:易

 行政組織法または行政立法の知識を問う問題です。

 この手の問題は、「六法を開いて、国家行政組織法12条と14条を見ておいてくださいね〜」と言っちゃえば、簡単に解説が終わってしまうんですけど、それだと味もソッケもありませんので、「私たちはこれらの条文を学習したことがない」ということを前提にして、解説を進めていきますね。

 まず、(ア)に入る語ですが、カッコの前後の文から推理しても、「委任」か「授権」か、どちらが入ってもおかしくないので、絞ることができません。ですので、ここは置いておきましょう。

 次に、(イ)に入る語ですが、12条は「各省大臣は、〜(イ)を発することができる」となっています。つまり、(イ)には、各省大臣が発するものが入るのです。
 よって、(イ)には省令が入ります。
 これで、正解は、肢4か肢5に絞ることができましたね。

 そして、(ウ)に入る語ですが、カッコの前後の文から判断して、ここには「告示」が入ると推理できるのですが、そもそも告示について勉強したことがある方は少ないと思いますので、すぐに「(ウ)には告示が入るぞ!」と解る人は少ないと思います。
 しかし、たとえ(ウ)に入る語が解らなくても、次の(エ)と(オ)で正解肢を見つけることができますので、あまり気にしなくても良いでしょう。

★告示について

 ここで、念のため告示について説明します。少し難しいなと感じられるときは、飛ばして頂いてもかまいません。

 この告示というのは、とてもやっかいな用語でして、いろんな意味で使われています。
 それらを行政法総論で学習した知識をもとにして、簡単にまとめてみますと、行政立法で学んだことと似ている告示(一応これを「行政立法的な告示」と呼んでおきますね。)と、行政行為で学んだことに当てはまる告示(これは「行政行為的な告示」と呼ぶことにします。)にまとめられます。

 行政立法的な告示をもう少しかみ砕いて言うと、法令の内容を補充するための告示ということです。行政立法も、法律の内容を補充するためのものですので、似ていますね。
 これには、法規たる性質を持つ告示と、法規たる性質を持たない告示があります。行政立法で学習する「法規命令」と「行政規則」との分類の仕方と同じですね。

 そして、行政行為的な告示をもう少しかみ砕いて言うと、準法律行為的行政行為の「通知」にあたる告示のことです。
 つまり、国民側に広くお知らせをするための告示ということです。

 ちなみに、ここでの「行政立法的な告示」や「行政行為的な告示」という用語は、行政法学上の用語ではなく、私が説明のために勝手に造った用語であることに注意しておいてください。このような用語を憶えても試験に出ませんので。

 このように、「告示」という用語は、いろんな意味で使われていますので、試験対策としては、ある程度理解しておくだけでよいでしょう。

 次に(エ)(オ)ですが、カッコの前後の文で、行政内部での命令などについて述べられていますから、それぞれ「訓令」と「通達」が入ることが推理できます。
 ちなみに、(エ)に「通達」、(オ)に「訓令」が入ることも予想されますが、選択肢のなかに、そのようになっているものがないので、無視しておきます。

 以上より、答えは4です。



◆重要度:高

問題9 行政指導に関する次の記述のうち、妥当なものはいくつあるか。

ア 行政指導は相手方私人の任意的協力を求めるもので、法令や行政処分のように法的拘束力を有するものではなく、宅地開発指導要綱のように書面で正式に公示される形式をとった場合や、指導に従わなかった場合には相手方の氏名が公表されることが条例によって定められている場合においても、法的拘束力がないということに変わりはない。
イ 規制的な行政指導によって、私人が事実上の損害を受けた場合には国家賠償請求訴訟によってその損害を求償することができる。これに対し、受益的な行政指導の場合においては、強制の要素が法律上のみならず事実上もないのであるから、行政指導に基づき損害が発生した場合には、民法上の不法行為責任を問うことはできても、国家賠償責任を問うことはできない。
ウ 行政機関が行政手続法による規律をうける行政指導を行うことができるのは、行政機関が行政処分権限を法律上有しており、処分に代替して事前に行政指導をする場合に限られる。これに対し、組織法上の権限のみに基づいて行われる事実上の行政指導については、行政手続法上の規定は適用されない。
エ 行政機関が同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し同種の行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、これらの行政指導に共通してその内容となるべき事項を定め、かつ行政上特別の支障のない限り、これを公表しなければならない。
オ 行政指導は、その内容および責任者を明確にするため書面で行うことを原則とすべきであり、書面によることができない相当な理由がある場合を除いて、口頭による行政指導をすることはできないという行政手続法の定めがある。これに対し、一部の行政手続条例では、行政手続法の規定とは異なり、口頭の行政指導を許容する規定を置いている場合がある。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ

【問題9の解説】 難易度:標準

 行政指導についての知識を問う問題です。個数問題の形式ですので、正解率はやや低めになると思われます。

 肢ア:この肢の文に書かれているとおり、行政指導には何ら法的拘束力はありません。これは、書面で正式に公示されているかどうかという形式によっても変わりはありませんし、氏名の公表という罰則的なことが定められているかどうかということによっても変わりはありません。やはり行政指導には法的拘束力はないのです。

 よって、この肢は妥当です。

 肢イ:国家賠償法1条1項に「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」とあります。

 つまり、行政指導により損害を受けた私人が、国家賠償請求できるかどうかは、「公権力の行使」をどのように解釈するかによって決まります。

 これについて裁判所は、公権力の行使とは、国の私経済作用および国家賠償法2条において適用されるものを除く、国や公共団体の活動のことをいうと、解釈しています。

 したがって、行政指導は、規制的なものや受益的なものという分類に関わらず、原則国家賠償請求の対象となるのです(もちろん、その他の要件を満たさないと、国家賠償請求できないのは言うまでもありません)。

 よって、この肢は「規制的な行政指導については国家賠償請求の対象となるが、受益的な行政指導については国家賠償請求ができない」というような内容のことが述べられているため、妥当ではありません。

 肢ウ:行政手続法2条6号に、行政指導とは「行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。」と定義されています。

 つまり、行政手続法が適用される行政指導について、その行政機関に処分権限があるかどうかでは分類していないのです。

 言い換えると、行政機関に処分権限があってもなくても、行政手続法2条6号に定義されている行政指導は、原則行政手続法が適用されるのです(適用除外の規定に該当する場合は、行政手続法は適用されないということは当然です)。

 また、組織法上の権限のみに基づいて行われていてもいなくても、行政手続法2条6号に定義されている行政指導は、原則行政手続法が適用されるのです。

 よって、この肢は妥当ではありません。

 肢エ:行政手続法36条にあるとおりですので、この肢は妥当です。

 ちなみに、法改正後は「行政指導指針」という語が用いられていますので、条文を確認してみてください。内容的には大きな変更はありません。

 肢オ:行政手続法に「行政指導をする場合、原則書面で行うこととする」というような条文は存在しません。

 つまり、行政指導を行うには、原則口頭でも書面でも良いということになります。

 よって、この肢は妥当ではありません。

 ちなみに、この肢の文のように、そのような制度がないにも関わらず、あたかもあるように見せかけている肢があります。これは、行政書士試験では(特に行政法に多い)、よくある作問テクニックです。
 このような肢は、相当細かく勉強されている方以外は、自信をもって正誤の判断をするのが難しいので、苦手にされている方が多いものと思われます。

 この手の肢を、自信をもって判断するためには、しっかりと条文にあたることです。お手持ちの六法で、行政手続法の条文のすべてを、何回も読んでおきましょう。

 以上より、妥当なものは肢ア、エの2つですので、答えは2です。



◆重要度:中

問題10 申請についての行政手続法の定めに関する次の記述のうち、妥当なものはいくつあるか。

ア 補助金の交付申請は、法令に基づかない申請であっても、行政手続法上の申請とみなされる。
イ 行政手続法上の申請のうち、行政庁が諾否の応答を義務づけられるのは、許可あるいは認可を求めるもののみに限られる。
ウ 許認可の申請にあたっては、申請者には申請権があり、行政庁には申請に対する審査・応答義務があるので、形式要件に適合している限り、申請書類の返戻は許されない。
エ 行政庁は、申請がその事務所に到達したときは、遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならない。
オ 申請に対し許認可を与える場合、それは、申請通りの内容を行政庁として認めることを意味しているので条件を付すことは許されない。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ

【問題10の解説】 難易度:難

 この問題は、例えば肢アのように、行政手続法の条文を、細かいところまで憶えていなければならないものや、さらには肢ウのように、条文の知識だけでは正誤の判断ができないものが含まれており、しかも個数問題の形式なので、正解するのは非常に難しいと思われます。

 肢ア:行政手続法2条3号に、「申請:法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。」とあります。

 つまり、行政手続法上の申請は、法令に基づく申請のことをいいます。

 よって、法令に基づかない申請は、行政手続法上の申請とはみなされませんので、この肢は妥当ではありません。

 肢イ:肢アと同じく、行政手続法2条3号に、「申請:法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。」とあります。

 つまり、行政手続法上の申請で、行政庁が諾否の応答を義務づけられるのは、許可と認可に限られていません免許その他の処分についても義務づけられるのです。

 よって、この肢は妥当ではありません。

 肢ウ:この選択肢の正誤を判断するのは非常に難しいですね。といいますのは、3つの部分について正誤の判断をしなければいけないからです。
 その3つの部分とは、まず、(1)「許認可の申請にあたっては、申請者には申請権があり」の部分、次に、(2)「行政庁には申請に対する審査・応答義務がある」の部分、そして、(3)「形式要件に適合している限り、申請書類の返戻は許されない」の部分です。
 では、それぞれについて説明します。

 まずは(1)の部分です。ある法令で、国民側に許認可の申請を認めている、ということを、角度を変えて言い換えれば、その法令は、国民側に許認可の申請権を認めている、ということができます。
 ですので、この部分は妥当であると考えることができます。
 ただ、この肢の文のように「申請者には申請権があり」とまで断言されてしまうと、少し気になってしまい、正誤の判断に迷いますよね・・・

 次に(2)の部分です。これは、行政手続法7条の初めの方に「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず」とあるように、行政庁には、申請に対する審査・応答義務があります
 また、応答義務については、次の(3)の部分で説明するような補正または許認可等の拒否、という定めも置いています。
 ですので、この部分は妥当です。

 そして(3)の部分です。
 まず、返戻[へんれい]という用語について説明すると、返戻とは、行政機関が、申請者から受け取った申請書類等を、申請者に返却することをいいます。
 次に、この部分の正誤についてですが、行政手続法7条の後半に「法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。」とあります。
 つまり、形式要件に適合しない申請については、補正を求めるために返戻をするか、または許認可等を拒否して返戻することが定められているのです。
 したがって、これを反対に考えると、形式要件に適合する申請の場合、返戻は許されないことになります。
 ですので、この部分も妥当です。

 よって、ここまでの(1)(2)(3)により、この肢は妥当です。

 肢エ:この肢は、さきほどの肢ウの(2)の部分で説明したとおりですので、妥当です。

 肢オ:この肢を判断するには、頭の切り替えが必要ですね。今、行政手続法の問題を解いているんですが、この肢は、行政法の一般理論の、行政行為の知識を問うているんです。
 つまり、許認可という行政行為に、条件を付することはできるか、という知識を問うているんです。
 ちなみに、行政行為に附款を付するには、原則、附款を付することを法律で認められているか、または裁量権が認められていることが必要でした。

 これと同じように、行政手続法上の許認可も、特にこの一般理論と異なる定めは置かれていないので、一般理論の通り、条件を付することを法律で認められているか、または裁量権が認められている場合は、条件を付することができます

 よって、この肢は妥当ではありません。

 以上より、妥当なものは肢ウ、エ、の2つですので、答えは2です。



◆重要度:高

問題11 行政手続法に規定されている聴聞手続に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 聴聞手続は行政庁の通知によって開始される。通知文書には、予定される不利益処分の内容、聴聞期日、場所等が必ず記載されていなければならない。
2 聴聞は行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰する。この場合に、行政庁が指名しうる職員の範囲については特に明文の制限はないので、その実質的な当否はともかく、当該不利益処分に関与した担当者を主宰者として指名することも不可能ではない。
3 聴聞の期日における審理は非公開が原則である。しかし、行政庁が相当と認めるときは、その裁量により公開して行うことができる。
4 聴聞手続の主宰者は、期日ごとに聴聞の審理の経過を記載した聴聞調書を作成し、また聴聞終結後は報告書を作成する。しかし、これらの文書には当事者の主張を整理して記載することが求められているだけで、主宰者の意見を記載することは許されていない。
5 行政庁は不利益処分の決定をするときは、聴聞調書の内容等を十分に参酌しなければならない。これは単にそれを参考に供するということだけを意味するのではなく、行政庁が聴聞調書に掲げられていない事実に基づいて判断することは原則として許されないことを意味する。

【問題11の解説】 難易度:標準

 やや細かい問題ですが、条文レベルです。行政手続法は、この問題のように条文のスミをつっつくような問題が出題されることがありますので、しっかりと条文を読み込んでおきましょう。

 肢1:行政手続法15条1項に「行政庁は、聴聞を行うに当たっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
 一、予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
 二、不利益処分の原因となる事実
 三、聴聞の期日及び場所
 四、聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地」
とあります。
 つまり、聴聞を行うに当たっては通知がなされる、ということから、この通知により聴聞手続が開始されることが分かります。また、その通知文書の内容は、一号から四号までのとおりです。

 よって、この肢は妥当です。

 肢2:行政手続法19条1項に「聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰する。」とある通りですので、この肢の前半は妥当です。

 そして、同条2項に「次の各号のいずれかに該当する者は、聴聞を主宰することができない。
 一、当該聴聞の当事者又は参加人
 二、前号に規定する者の配偶者、四親等内の親族又は同居の親族
 三、第一号に規定する者の代理人又は次条第三項に規定する補佐人
 四、前三号に規定する者であったことのある者
 五、第一号に規定する者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人
 六、参加人以外の関係人」
とあります。これは、主宰者についての欠格事由(主宰者になれない人のことです)を定めています。

 さて、この欠格事由に目を通してみてください。「不利益処分に関与した担当者」という文章がありましたか?ないですよね。
 つまり、「不利益処分に関与した担当者」は、欠格事由に当たらないので、主宰者の指名を受けることができるんです。その当否は別として、ですが。

 よって、この肢は妥当です。

 肢3:行政手続法20条6項に「聴聞の期日における審理は、行政庁が公開することを相当と認めるときを除き、公開しない。」とあります。
 つまり、聴聞の審理は、原則非公開で行われますが、行政庁の判断により、公開することができるのです。

 よって、この肢は妥当です。

 肢4:行政手続法24条の1項から3項までに「1 主宰者は、聴聞の審理の経過を記載した調書を作成し、当該調書において、不利益処分の原因となる事実に対する当事者及び参加人の陳述の要旨を明らかにしておかなければならない。
 2 前項の調書は、聴聞の期日における審理が行われた場合には各期日ごとに、当該審理が行われなかった場合には聴聞の終結後速やかに作成しなければならない。
 3 主宰者は、聴聞の終結後速やかに、不利益処分の原因となる事実に対する当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成し、第一項の調書とともに行政庁に提出しなければならない。」と定められています。

 まず、青文字の部分に注目しながら条文を読むと分かりますように、肢の文の前半は妥当です。

 次に、赤文字の部分に注目して条文を読んでみてください。主宰者は、報告書に意見を記載することとされていますね。

 よって、この肢は誤りです。

 肢5:行政手続法26条に「行政庁は、不利益処分の決定をするときは、第二十四条第一項の調書の内容及び同条第三項の報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌してこれをしなければならない。」とある通り、この肢の文の前半は妥当です。

 次に、「参酌」の意味についてですが、これは単に参考にする、というだけではなく、調書や報告書の内容を十分に尊重すべきことを意味します。
 つまり、報告書等の内容を尊重すべきなのですから、その内容とは異なる、新たな事実に基づいて、不利益処分の判断をしてはならないということを意味するのです。
 もし、報告書等の内容に掲げられていない(言い換えると、聴聞手続を踏まえていない)、新たな事実に基づいて不利益処分の判断をすることができるのならば、聴聞手続を踏まえずに不利益処分の判断をしたのと同じことになってしまい、行政手続法の脱法行為となってしまいますからね。

 ちなみに、そのような参酌の意味が分からなくても、推理することはできますね。もし、調書や報告書を、単に参考にするだけでよく、調書や報告書の内容とは離れた部分で判断して不利益処分できるとすると、何のために聴聞手続を行ったのか、わからなくなってしまいますよね。聴聞の意義が失われてしまうわけです。
 ですので、この肢の文の後半は、「どうやら正しそうなことが書いてあるぞ」と推理できるのです。

 よって、この肢は妥当です。

 以上より、答えは4です。



◆重要度:高

問題12 行政代執行法に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1 行政代執行法の定める手続的要件は、憲法上の要請と解されているので、個別の法律で簡易代執行を認めることはできない。
2 行政代執行法では、代執行の前提となる命令等の行政処分がすでに文書で告知されているので、戒告を改めて文書で行う必要はない。
3 行政代執行では、緊急の必要性が認められ正規の手続をとる暇がない場合には、代執行令書による通知手続を経ないで代執行をすることができる。
4 行政代執行は、義務者の義務不履行をその要件として、その意に反して行われるので、行政代執行手続においても、行政手続法上の不利益処分の規定が適用される。
5 行政代執行法は、法令違反の是正が目的とされているから、義務の不履行を放置することが著しく公益に反しない場合であっても、代執行が可能である。

【問題12の解説】 難易度:標準

 主に行政代執行法の条文の知識を問う問題です。行政代執行法の条文に、必ず目を通しておきましょう。

 肢1:行政代執行法は、憲法の人権保障の理念に基づき定められた、行政が行う代執行についての一般法です。
 一般法である、ということは、特別法の存在を想定している、といえます。
 つまり、各個別の法律(いわゆる特別法)により、簡易な方法で行政が代執行を行うことを否定しているわけではない、ということです。
 なぜなら、たとえその特別法が簡易な方法を定めていたとしても、それが憲法の理念に合致しているならば、その特別法を否定する理由がないからです。

 よって、この肢は妥当ではありません。

 肢2:行政代執行法3条1項に「前条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予[あらかじ]文書で戒告しなければならない。」とあります。

 よって、戒告を改めて文書で行う必要がありますので、この肢は妥当ではありません。

 肢3:行政代執行法3条3項に「非常の場合又は危険切迫の場合において、当該行為の急速な実施について緊急の必要があり、前二項に規定する手続をとる暇がないときは、その手続を経ないで代執行をすることができる。」とあります。

 ちなみに、この条文の途中に「前二項に規定する手続」とありますが、これは、戒告の通知手続と、代執行令書による通知手続を意味します。
 つまり、緊急の場合、代執行令書による通知手続を経ないで代執行をすることができる、ということが定められているのです。

 よって、この肢は妥当です。

 肢4:行政手続法2条4号とその「イ」に「不利益処分:行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く
 イ 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分」
とあります。

 つまり、行政代執行は、不利益処分の定義に当てはまるのですが、この条文の「イ」の事実行為に該当するため、行政手続法上の不利益処分から除かれているのです。
 ですので、行政代執行手続については、行政手続法上の不利益処分の規定は適用されません

 ちなみに、行政代執行などの行政強制は、権力的な行政活動ですが、行政行為とは異なり、法行為ではなく事実行為です。思い出しておきましょう。

 よって、この肢は妥当ではありません。

 肢5:行政代執行法2条では、代執行を行う要件として「法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。」と定めています。

 つまり、代執行を行うには、義務の不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときであることが必要である、ということです。

 よって、この肢は妥当ではありません。

 以上より、答えは3です。



◆重要度:高

問題13 国家賠償法に関する次の記述のうち、判例に照らし妥当でないものはいくつあるか。

ア 国家賠償法1条に定める公共団体の責任とは、公共団体自体の責任を問うものではなく、加害公務員の責任を代位するといういわゆる代位責任であるから、具体的に損害を与えた加害公務員の特定が常に必要とされる。
イ 国家賠償法における公権力行使の概念は非常に広く、法的行為のみならず、警察官による有形力の行使等の事実行為をも対象とするが、教育活動や公共施設管理などのサービス行政に関わる行為など民法709条の不法行為責任を問うことができる場合については、国家賠償法に基づく責任を問うことはできない。
ウ 職務を行うについてという要件の範囲は非常に広く、勤務時間外に行われた、公共団体にとってはおよそ直接監督することができない、職務とは関わりのない行為でも、それが制服を着用していたり、公務であることを騙ったりして、外見上職務であるように見えれば、国家賠償法上の職務関連行為として認定されることがある。
エ 国家賠償法1条の責任は、国・公共団体の客観的な責任を問うものであり、損害が発生したことについて、行為者たる公務員本人の故意過失が認められない場合であっても、損害の発生が国・公共団体の作為・不作為に起因するものである場合には、賠償責任が成立することが最高裁判例により認められている。
オ 国・公共団体の機関は、規制権限の行使・不行使に関する判断をする裁量的な権限を一般的に有しているが、国民の生命・身体に直接の危害が発生するおそれがある場合には、規制権限の不行使が国家賠償法上責任あるものとして認められる場合がある。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ

【問題13の解説】 難易度:標準

 判例の知識を総合的に問う問題です。個数問題の形式なので、一見正解するのは難しいように思えますが、各肢で問われている内容は、いずれも通常の勉強のなかで学ぶ判例ばかりですので、恐れることなく、確実に正解できるように学んでおきましょう。

 肢ア:まず、前半の代位責任についての部分は、肢の文のように考えるのが一般的ですので妥当です。

 そして、後半の加害公務員の特定が必要かどうかについてですが、裁判所(最判昭57.4.1)は「国又は公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において、他人に被害を生ぜしめた場合、それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、〜(中略)〜国又は公共団体は、加害行為不特定のゆえをもって国家賠償法又は民法上の損害賠償責任を免れることができない。」と判断しています。

 内容を簡単にまとめると、加害公務員が特定されなくても、公共団体は国家賠償法上の責任を負うことがある、ということです。
 つまり、加害公務員の特定が常に必要とされるわけではありません。

 よって、この肢は妥当ではありません。

 肢イ:国家賠償法における「公権力の行使」の意味は、非常に広くとらえられています。
 裁判所(東京高判昭52.4.27)は「国家賠償法1条にいう『公権力の行使』という要件には、権力作用のみならず、非権力作用(ただし、純然たる私経済作用と、同法2条に規定する公の営造物の設置管理作用を除く)もまた包含される。」と考えています。

 つまり、公権力の行使とは、純然たる私経済作用と、国家賠償法2条で救済される場合とを除く、すべての行為のことである、と考えられているのです。

 ですので、教育活動などのサービス行政についても、この定義に当てはまるならば、国家賠償法上の責任を問うことができます。
 実際、公立学校の教師の教育活動について、公権力の行使にあたるとした判例(最判昭62.2.6)がある通りです。

 よって、この肢は妥当ではありません。

 肢ウ:裁判所(最判昭31.11.30)は「国家賠償法1条は、公務員が主観的に権限行使の意思をもってする場合にかぎらず、自己の利をはかる意図をもってする場合でも、客観的に職務執行の外形をそなえる行為をして、これによって他人に損害を加えた場合には、国又は公共団体に損害賠償の責任を負わしめて〜(以下略)」と判断しています。

 つまり、肢の文に「勤務時間外に行われた、公共団体にとってはおよそ直接監督することができない、職務とは関わりのない行為でも、それが制服を着用していたり、公務であることを騙ったりして、外見上職務であるように見えれば、国家賠償法上の職務関連行為として認定されることがある。」とある通りです。

 よって、この肢は妥当です。

 肢エ:国家賠償法1条1項に「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」とあります。

 これについて裁判所(最判昭28.11.10)は、公務員の故意・過失を欠く場合、国家賠償法による損害賠償請求はできない、ということを述べています。

 よって、公務員の故意・過失が認められない場合は、国・公共団体の賠償責任は成立しませんので、この肢は妥当ではありません。

 肢オ:まず、この肢の文の前半部分についてですが、国・公共団体の機関は、規制権限の行使・不行使に関する判断をする裁量的な権限を一般的に有していると考えられていますので、妥当です。

 そして後半部分ですが、裁判所(最判平16.10.15)は「国が水俣病による健康被害の拡大防止のために、いわゆる水質ニ法に基づく規制権限を行使しなかったことは、著しく合理性を欠くものであって、国家賠償法1条1項の適用上、違法となる。」と判断しました。

 つまり、規制権限の不行使が国家賠償法上責任あるものとして認められる場合がある、ということを示しているのです。

 よって、この肢は妥当です。

 以上より、妥当でないものは、肢ア、イ、エの3つですので、答えは3です。



◆重要度:高

問題14 次のア〜オの記述で、行政不服審査法の不服申立ての対象とならないものが二つある。その組合せとして、正しいものはどれか。

ア 都市計画法に基づく開発許可処分
イ 外国人の出入国に関する処分
ウ 人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有する事実行為
エ 建築基準法上の建築確認処分
オ 国税犯則事件に関する法令に基づき、国税庁長官が行う処分

1 ア・ウ
2 ア・オ
3 イ・エ
4 イ・オ
5 ウ・オ

【問題14の解説】 難易度:標準

 行政不服審査法の条文の知識を問う問題です。いわゆる適用除外の知識が問われていますので、やや細かく感じられますが、何回も条文にあたっておきますと、判断できるようになります。ガンバって、しっかりと条文を読み込んでおきましょう。

 肢ア:行政不服審査法4条1項本文に「行政庁の処分(この法律に基づく処分を除く。)に不服がある者は、次条及び第六条の定めるところにより、審査請求又は異議申立てをすることができる。」とあります。
 また、同項但書に、いわゆる適用除外について定められていますが、都市計画法に基づく開発許可処分は、この適用除外に当てはまりません

 よって、肢アの記述は、不服申立ての対象となります。

 肢イ:行政不服審査法4条1項10号に、いわゆる適用除外として「外国人の出入国又は帰化に関する処分」と定められています。

 よって、肢イの記述は、この適用除外に当てはまりますので、不服申立ての対象となりません。

 肢ウ:行政不服審査法2条1項に「この法律にいう「処分」には、各本条に特別の定めがある場合を除くほか、公権力の行使に当たる事実上の行為で、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するもの(以下「事実行為」という。)が含まれるものとする。」とあります。

 つまり、「処分」という用語には、原則、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有する事実行為も含む、と定められているのです。

 そして、処分は、適用除外に当てはまらない限り、不服申立ての対象になることについては、肢アで説明しました通りです。

 よって、肢ウの記述は、不服申立ての対象となります。

 肢エ:肢アで説明したのと同じ理由により、肢エの記述は、不服申立ての対象となります。

 肢オ:行政不服審査法4条1項7号に、いわゆる適用除外として「国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づき、国税庁長官、国税局長、税務署長、収税官吏、税関長、税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づき、これらの職員の職務を行なう者を含む。)が行なう処分」と定められています。

 よって、肢オの記述は、この適用除外に当てはまりますので、不服申立ての対象となりません。

 以上より、不服申立ての対象とならないものは、肢イとオですので、答えは4です。



◆重要度:高

問題15 次の文章の空欄(A)〜(D)に入る適切な文言の組合せとして、妥当なものはどれか。

「不作為に対する不服申立ては、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らの判断も示さない場合に行政庁がすみやかに判断を下すよう督促し、事務処理の促進を求めるものであるから、( A )のほうが( B )より実効性がないということは、必ずしもいえない。むしろ不作為の不服申立ては、( C )自体に直接行ったほうが、迅速、適切な措置を期待できる場合もあるので、本法は、不作為に対する不服申立てに関しては( D )をとった。」
(出典 田中館照橘ほか「判列コンメンタール行政不服審査法」より)

   A      B      C    D
1 異議申立て  審査請求   上級庁  自由選択主義
2 審査請求   再審査請求  上級庁  審査請求中心主義
3 審査請求   再審査請求  処分庁  自由選択主義
4 異議申立て  審査請求   処分庁  自由選択主義
5 審査請求   再審査請求  処分庁  審査請求中心主義

【問題15の解説】 難易度:易

 不作為に対する不服申立て制度の知識を問う問題です。

 まず、(A)と(B)ですが、この後に「必ずしもいえない」とあるように、一般論が、「必ずしも」当てはまるとは「いえない」ということが述べられていることがわかります。
 よって、一般論としては、異議申立てのほうが、審査請求より実効性がないものと考えられていますので、(A)には異議申立て(B)には審査請求が入ります。

 次に、(C)ですが、この後に「自体に直接行った」とあるので、(C)には処分庁が入ることが分かります。

 そして、(D)ですが、不作為に対する不服申立ては、原則、異議申立て・審査請求のどちらを行ってもよいことになっています。これを自由選択主義というのですから、(D)には自由選択主義が入ります。

 以上より、答えは4です。



◆重要度:高

問題16 平成16年の行政事件訴訟法改正では、行政訴訟における国民の救済範囲の拡大と国民にとっての利用しやすさの増進がはかられた。次の記述のうち、改正法でなお実現されなかったものはどれか。

1 従来、抗告訴訟における被告は行政庁とされていたが、改正後は、国家賠償法と同様に、国または公共団体を被告とすることになった。
2 従来、無名抗告訴訟の一種として位置づけられてきた義務付け訴訟や差止訴訟が、改正後は法定抗告訴訟とされたのにともない、仮の義務付けおよび仮の差止めの制度が設けられた。
3 従来、きわめて厳格であった「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」という執行停止の要件が、「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」とされ、改正前に比べ緩和された。
4 従来、原告適格の要件としての「法律上の利益」が厳格に解釈されていたが、当該法令と目的を共通にする関係法令も参酌すべきことなどとされ、その拡大がはかられた。
5 従来、厳格に解釈されてきた取消訴訟における処分性について、具体的な効果など諸事情を総合的に考慮し判断すべきとの解釈規定が加えられ、その拡大がはかられた。

【問題16の解説】 難易度:標準

 行政事件訴訟法の改正点の知識を問う問題です。普段の学習の中で、改正点を押さえていた方が多いと思われますので、比較的簡単に正解できたと予想されます。

 肢1:改正前では、原則、被告は処分した行政庁とされていましたが、何が(どれが)行政庁であるかは、意外に難しく、何を(どこを)被告として訴訟を起こせばよいか、迷ったり誤ったりすることが結構ありました。

 そこで、改正後では、原則、被告は国または公共団体としたのです。

 よって、この肢の記述は、改正法で実現されました。

 肢2:改正前では、義務付け訴訟や差止訴訟は、無名抗告訴訟の一種とされていました。
 しかし、無名つまり法律で定められていない訴訟の型ですので、裁判所はこれらの訴訟をなかなか認めてくれません。
 そこで、改正後では、義務付け訴訟や差止訴訟を、法定抗告訴訟としたのです。それに伴い、仮の義務付けおよび仮の差止めの制度が設けられました

 よって、この肢の記述は、改正法で実現されました。

 肢3:改正前では、執行停止をするには「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」という要件をみたす必要がありました。
 そして、この要件は、非常に厳格ですので、なかなか執行停止を認めることができません。

 そこで、改正後では、この要件を「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」と緩やかにしたのです。

 よって、この肢の記述は、改正法で実現されました。

 肢4:改正前では、訴訟要件の一つである「法律上の利益」について、かなり厳格に解釈されていました。ですので、訴訟を起こしても、法律上の利益が認められない、という理由で門前払いされる例がたくさんありました。

 そこで、改正後では、法律上の利益を解釈するにあたっては、「法令と目的を共通にする関係法令も参酌すべきこと」などの基準を設け、あまり厳格な解釈になり過ぎないように定められたのです。

 よって、この肢の記述は、改正法で実現されました。

 肢5:訴訟要件の一つである「処分性」については、特に改正されていませんので、以前と同じように考えられています。

 よって、この肢の記述は、改正法で実現されませんでした。

 以上より、答えは5です。


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