クマべえ先生の行政書士試験合格ゼミ

行政法「行政罰」のページ

 ここは、行政法「行政罰」のページです。

 今回は、行政罰についてお話しをしていきます。

1.行政罰の全体像

 まず初めに、行政罰の全体像について学びましょう。

 あなたは、過去、アルバイトをしたことがありますか?

 学生時代にされた経験がおありかも知れませんね。

 もし無かったとしても、アルバイトをしているイメージをもって、読み進めてみてくださいね。

 さて、たとえアルバイトでも、給料をもらって働くわけですから、その会社のルールを守らなくてはなりません。

 例えば、「朝は8時に出勤!」と言われれば、8時には会社に行かなくてはいけませんね。

 もし、遅刻すると、どうなるでしょう?

 会社から「時給を減らす!」とか、最悪の場合は「クビだ!」とか言われて、遅刻に対して制裁されることがあるかも知れません。

 このように、世間一般では、決められたルールを守らない場合、制裁を加えるということをしますよね。

 少し次元は異なりますが、行政活動にも、これと似たものがあります。

 例えば、行政法上「赤信号は止まれ!」と義務付けられているにもかかわらず、赤信号を無視して通行したとします。

 すると、「あなたは、赤信号を無視したでしょ。なので制裁を加えます。罰金1万円を払いなさい!」と処罰されます。

 このようなものを、行政罰と呼んでいます。

 つまり、行政罰とは、行政法で課せられた義務の違反に対して、制裁として科せられる処罰のことをいうのです。

 もっとも、「行政」罰という名が付いていますが、実際に罰を科すのは、行政だけではなく、裁判所であることも多いんですけどね。憲法の人身の自由とのからみがありますので。

 まあ細かい話はおいといて、とりあえず、次の図表1で、行政罰のイメージを確認してみてください。

【図表1:行政罰のイメージ】

行政罰のイメージ


 そして、この行政罰は、行政刑罰と、行政上の秩序罰[ちつじょばつ]の2つに分類されます。

 その内容については、後で説明しますので、ここでは次の図表2を使って、体系をつかんでおいてください。

【図表2:行政罰の全体像】

行政罰の全体像


 それでは、行政刑罰と行政上の秩序罰について、もう少し細かい内容を見てみることにしましょう。



2.行政刑罰

 まずは、行政刑罰から学んでいきましょう。

 犯罪と刑罰について定めている法律で、最も有名なものは?と問われれば、たいていの方は「刑法」と答えられると思います。

 その有名な刑法という法律の中には、刑罰の種類について定められています。ここで、ちょっと基礎法学の勉強がてら、その刑罰についてみてみましょう。

 刑法9条には、刑罰の種類として、死刑、懲役[ちょうえき]、禁錮[きんこ]、罰金、拘留[こうりゅう]、科料[かりょう]、没収の7つを定めています。

 死刑は、その言葉通り、命を奪う刑です。

 懲役は、身柄[みがら]を監獄[かんごく]に拘束する刑で、その監獄内で決められた作業(仕事)をさせられるものです。

 禁錮は、懲役と同じく身柄を監獄に拘束する刑なのですが、決められた作業をさせられません。もっとも、自主的に作業を行う人がほとんどだそうです。

 罰金は、お金を奪う刑で、その額は原則1万円以上とされています。

 拘留は、懲役のように身柄を拘束する刑ですが、その期間が1日以上30日未満と、懲役より短くなっています。

 科料は、罰金と同じくお金を奪う刑ですが、その額は原則1000円以上1万円未満と、罰金より低くなっています。

 そして、没収は、その言葉通り、物を没収する刑です。この刑は、単独で科すことができないため、例えば「懲役○年プラス没収」というように、他の刑に付け加えて科します。

 このため、没収は、付加刑と呼び、反対に、死刑から科料までの6つの刑を主刑と呼びます。

 なお、刑の重さは、原則重い方から、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料の順序となっています。


 さて、行政法に違反した場合に科せられる行政罰にも、いろいろな種類があるのですが、そのうち、今学びました刑法上の刑を科せられる行政罰を、行政刑罰と呼んでいます。

 例えば、図表1のような場合ならば、刑罰の内容が「罰金を払え!」となっています。罰金は刑法で定められている刑です。ですので、図表1の例であげた行政罰は、行政刑罰にあたります。

 そして、この行政刑罰は、刑法上の刑を科すものですので、原則、殺人罪や窃盗罪と同じように、刑事訴訟法という法律で定められた手続により、裁判所によって科されます。

 簡単に言うと、検察官の公訴提起に始まり、裁判所の「判決を言い渡す。被告人を罰金1万円に処する!」という判決により、行政刑罰が科されるのです。

 また、この行政刑罰については、原則、刑法の総則(1条から72条まで)が適用されます

 例えば、刑法の41条では「14歳に満たない者の行為は罰しない。」と定められていますので、たとえ3歳の子が赤信号を無視したとしても、その子に対して「罰金1万円払え!」と行政刑罰を科されることはない、ということです。



3.行政上の秩序罰

 次は、行政上の秩序罰について学びましょう。

 この行政上の秩序罰とは、行政罰のうち、行政刑罰のように刑法で定められた刑を科すのではなく、過料[かりょう]を科せられる行政罰のことをいいます。

 例えば、Aさんが引越しをしたとします。

 この場合、行政に対して「引っ越しましたよ」という届けを出さないといけません。これは、住民基本台帳法という法律で定められているものです(転入届や転出届、転居届)。

 しかし、その届を出さない場合は、「過料2万円払え!」と言われることがあります。

 これが、行政上の秩序罰と呼ばれるものです。

 ところで、この過料は、行政刑罰でみた罰金や科料と同じようにお金を奪うものですが、刑法という法律の中では定められていない、という点で異なります。

 つまり、過料は、刑法上の刑ではない、ということです。この点を、しっかりと理解しておきましょう。

 ちなみに、科料と過料は、どちらも「かりょう」と読みますが、ややこしいので、よく科料を「とがりょう」と読み、過料を「あやまちりょう」と読み分けることがありますのでご参考に。

 では、次の図表3で、行政上の秩序罰のイメージをつかんでおいてください。

【図表3:行政上の秩序罰のイメージ】

行政上の秩序罰のイメージ



4.行政刑罰と行政上の秩序罰との違い

 では最後に、行政刑罰と行政上の秩序罰との違いについて、まとめておきましょう。

 まず、行政刑罰は、重大な義務違反に対して科されるのに対し、行政上の秩序罰は、軽い義務違反に対して科されるものです。

 そして、行政刑罰は、刑事訴訟法の定めにもとづいて、裁判所が科すのに対し、行政上の秩序罰は、原則、非訟事件手続法という法律の定めにもとづいて、裁判所が科します。

 また、行政刑罰は、原則、刑法総則の定めが適用されるのに対し、行政上の秩序罰は、刑法総則の定めは適用されません

 では、次の図表4で違いをまとめていますので、知識を整理しておきましょう。

【図表4:行政刑罰と行政上の秩序罰との違い】

行政刑罰と行政上の秩序罰との違い



(終わり)

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